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Vol.03 厚木ハム(株式会社しまざき牧場)様
創業50年の自社農場を持つ株式会社しまざき牧場の、豚肉販売およびハム・ソーセージの製造・販売部門といえる厚木ハム様。おいしい豚肉を追求しつづけ、ハンガリーの食べる国宝といわれる「マンガリッツァ豚」と「デュロック豚」をかけ合わせて生まれた新品種の販売に際し相談をいただきました。新品種のブランディングをどのように考えて進め、どのような成果を生んでいるのか、弊社ブランディングディレクターの関口光雄が伺いました。
- ZP®(ずっとパートナーズ®)ブランディング
- 30年以上にわたり、企業や学校、自治体などの様々な広告・ブランドづくりに携わってきたアストラカン。その中で培った、“自社では気づけない魅⼒を際⽴たせる技術”を強みに、中長期的な視点でブランディング支援を行い、クリエイティブ・パートナーとして伴走していくオリジナルプログラムです。

新たなブランド豚を、どう広めていくかが見えませんでした。
―ブランディングに取り組んだきっかけはどのようなものでしたか。
嶋崎:厚木ハムでは豚肉、ハム、ソーセージの製造、販売をしていますが、会社(株式会社しまざき牧場)としては、豚を育てる牧場を持っていて長くおいしい豚の生産を追求してきました。そんな中、それこそ、世界中においしい豚を探し求めてみつけたのがハンガリーの「マンガリッツア豚」だったんです。日本で初めて生体で輸入して生産を開始し、主にレストランや飲食店に販売しています。
関口:ハンガリーでは「食べる国宝」と呼ばれているほどのおいしさとお聞きしました。特に、脂に甘みがあって、とても濃厚で美味しいとプロの料理人の間でも評判のようですね。
嶋崎:ただ、脂が「濃い」と感じる方もいて、日本人にとっては、もう少し赤身が多い方が好まれるのではないかと考えました。しまざき牧場は、ずっと「種豚」の研究、生産をしていて日本中の牧場に「種豚」を供給するなど豚肉の質を高める知識と技術を蓄積してきています。そこで、そのノウハウを活かして「マンガリッツァ豚」の品種改良に取り組みました。数年にわたってさまざまな試行錯誤を繰り返した結果、「デュロック豚」と掛け合わせることで生まれたのが、今「贅豚(ぜいとん)」と呼んでいるものなんです。
関口:私も頂きましたが、これは、本当においしいです。正直、これまで豚肉というものに、ここまでの差を感じることなんてなかったです。歯ごたえも良く、脂身の甘みがまろやかで、噛むほどに味わいが出てくるという感じです。どれをとっても、私の豚肉の概念が変わりました。
嶋崎:ありがとうございます。ただ、いい豚ができたものの、どうやってこの豚の良さをアピールしていこうかという打ち出し方で行き詰まっていたんですね。その時、おつきあいのある日本政策金融公庫さんに相談したらブランディング支援もしているとのことで、紹介されたのがアストラカンさんだったんです。

「贅豚」は、満場一致!コミュニケーションのスピードが違います。
実際、ブランディングをはじめて感じられたことは?
嶋崎:実は、最初は、自分たちで売り出していこうと考えて、「DMG豚」という名前をつけて、チラシを作ったりして店頭でも紹介したんですよ。ただ、なかなか「DMG豚」と聞いても、おいしい豚肉というイメージがわかないし、実際「これ何?」と聞かれた時の説明も大変だなと感じていました。そんな時、いろいろとお出しいただいた案の中に、「贅豚(ぜいとん)」という言葉があって「これだ!」と思いました。
関口:ありがとうございます。何百種とある日本のブランド豚のほとんどが、実は、飼料や飼育環境の違いだけでブランド登録されていて、本当に味を決める「品種の掛け合わせ」で生まれてきた真のブランド豚と言えるのは少ないという話をお聞きして、とにかく独自性を出したいという思いでご提案しました。
嶋崎:まさに、そうですね。「贅豚」という言葉には、よく耳にするようなものではなくオリジナリティを感じましたし、国産ということもわかります。また「贅」という漢字があることで、贅沢なもの、ひと味ちがうものであることがわかっていただけると思いました。正直、「贅豚」は普通の豚肉のおおよそ、1.5倍~2倍の値段になるので、その質をしっかり伝えられるものだと感じ、スタッフも満場一致で決まりました。
関口:「晴れの日」の食卓にのる豚肉でありたいとおっしゃっていたのが、とても印象的でした。「贅豚」は本当にごちそうにぴったりの食材ですね。

ネーミング、ロゴ、パンフやホームページもトータルで発信する大切さを実感しました。
―「贅豚」を発信し始めてからの実感、反響はいかがでしょうか。
嶋崎:まず、提案してもらって感じたことは、ネーミングからロゴの提案、それと後になって作成したパンフレットもあわせて、やはりトータルで考えていくことが大事ということでした。これまで、お店の看板もそうですし、いろんな商品のパンフレットやポスターなども作ってきて、一つ一つはもちろんこだわって納得のいくものを作っているんですが、全体を見るとイメージにバラつきを感じる部分があるかもしれません。
関口:ブランディングをすすめる時には「一貫性を持ってください」ということを、何よりもまず、お願いしています。たとえば商品をPRするパンフレットと動画があっても、同じ商品のPRなのにメッセージや色使いがバラバラですと同じ商品として認識されないので印象が残らず損してしまいます。我々も、「贅豚」のロゴやパンフレットをご提案した際には、元々、厚木ハムさんが使っていらっしゃるキーカラーである「ブラウン」と全体的な質感を意識しつつ考えてきました。そのことで、どこで、どんなツールに出会っても、「厚木ハムさん」であり「贅豚」のものであることを認識してもらえます。
嶋崎:そう考えると、やはり、最初に足並みをそろえることが大事ですね。「贅豚」は一般の消費者の方、レストランの方も、インターネットで検索して見つけたとHPからの問い合わせも多いんですが、パンフレットやパッケージのシールなどもあわせて、「贅豚」の世界をしっかり伝えられていると思います。

質のいいおいしさをお届けして、食文化に貢献していきたい。
―ブランディングに取り組んで実感されている効果はありますか。
関口:「贅豚」をきっかけに、その後「贅豚」以外にも使う贈答用や送付用の箱などもご依頼いただいています。
嶋崎:はい。箱って、ただモノを入れて送るだけのものじゃないんですよね。特に贈り物として受け取った方が、目にした印象や手にした時に感じる質感がとても大切だと考えて見直しを進めはじめました。
関口:そうですね、梱包によって、中身に対しての印象も変わってくるのも間違いありませんから。
嶋崎:「贅豚」もそうですが、厚木ハムでお届けしているソーセージやハムは、本当にこだわってつくっている自負がありますし、お客様も期待してお選びいただいているものだと思いますので、その質にあった箱であることが大事だと思います。今後、通販にも力を入れていきたいと考えていますが、遠く離れた方が手にされた時にも、私たちの作り手の思いがしっかり伝わるようなものになればと思っています。
関口:箱も含めてのクオリティ、ブランドだと思います。今後、考えておられる取り組みなどはありますか。
嶋崎:厚木ハムのハムやソーセージを、もっと多くの方に食べていただきたいという思いはあります。ただ、あまり手広く店舗展開したりすると、手作りなので、どうしても品質管理が難しくなってしまいます。ていねいに質を維持しながら、できる範囲でお届けできる量を増やしていきます。そして、私たちがドイツで出会って作り始めて、ドイツでも賞をいただいて認められた本物の味を、ドイツの食文化として広めていきたいですね。厚木ハムと聞いただけで、「こだわりぬいた、ドイツ本場のおいしさ、おいしい豚肉“贅豚“」を想い浮かべていただけるようになればいうことはありません。

厚木ハム(株式会社しまざき牧場)
代表職人 嶋崎洋平様
神奈川県厚木市生まれ。2002年より厚木ハムを経営。
「しまざき牧場」の養豚に携わりつつ、精肉の販売、食肉加工を行い、
本場ドイツの権威あるコンテストで数々の受賞歴を誇る。
株式会社ASTRAKHAN
取締役 関口光雄
クリエイティブディレクター兼コピーライター。
ZPブランディングディレクター。